こんにちは、ウマノです。
私は仕事柄たくさんの音楽スタジオ(特にリハーサル・スタジオ)を日々見ています。
そうすると分かってくるんですが、繁盛しているスタジオには繁盛しているスタジオの、そして繁盛していないスタジオには繁盛していないスタジオの、それぞれ典型的な特徴があります。
いわば、
「はやってるスタジオあるある」
「はやってないスタジオあるある」
ですね。
これ、私のようにコンサルタントとして第三者的・客観的視点で見るとすぐ分かるんですが、いざ当事者(オーナーや店長)の立場になると自スタジオがどちらの状況にはまっているのか見えにくいものです。
そこで、そんな「こういうスタジオは繁盛しない」という特徴を言語化することによって、これを読んでいるオーナーさんや店長さんに“いくら頑張ってもお客様が来ない泥沼”から脱出する手掛かりを掴んでもらおうと思っています。
今回はタイトルの通り、
「お客様が来ないスタジオは『◯◯的価値』がアンバランスになってしまっている」
ということです。
これだけではよく分かりませんよね。
では、どういうことか具体的に説明してゆきましょう。
「お客様が来ないスタジオ」の二種類のパターン
思うように繁盛しないスタジオには二種類あります。
ダメなスタジオのパターン[Ⅰ型]
まず一つ目のタイプは非常にシンプル。
“そもそもスタジオの機能としてどうなの!?”とツッコみたくなるようなスタジオです。
- 機材が壊れている。
- ピアノの調律がされてない。
- 機材が業界標準的な業務用機材ではなく、楽器入門者が自宅で使うような安物プライベート・ブランドばかり。
- 掃除がされてない。
- 接客がなってない
- 利用料金が適正でない。
そんなスタジオです。
これはどちらかと言えばオープンして日が浅いスタジオに多いですね。
あるいは古いスタジオであっても、オーナーなり責任者が代替わりしてその方のサービス業の経験や音楽についての知識が浅い場合にも見られます。
責任者の経験不足により、上に挙げたような点が問題であるという事がそもそも認識されてないんですね。
まぁこれは改善点が分かりやすいので、アドバイスとしては比較的簡単なんです。
これらスタジオとしてあり得ない点を正してゆけばいいだけですから。
一点だけ難しさがあるとすれば、オーナーがその経験の浅さからこれら問題点の改善の重要性に気づいておらず、そのためオーナーを説得するのに骨が折れるということでしょうか。
上に挙げたような事が問題点であるということは、音楽スタジオというものに関してある程度の常識的知識を持ち合わせている人にとっては当然の事です。
ただ、そうでない人がスタジオの責任者である場合もあるわけで、このような問題点を持つスタジオも存在するのです。
これをダメなスタジオのパターン[Ⅰ型](Ⅰ型ダメスタ)としましょう。
ダメなスタジオのパターン[Ⅱ型]
もう一つのタイプは、
- 機材はしっかりしてる。
- 料金も適正。
- 立地もまぁ悪くない。
- 接客が特別悪いというわけでもない。
- けど、なぜか競合店に比べてお客様が入らない。
そんなスタジオです。
こちらは開店したてのスタジオよりも、オープンしてからある程度年数が経っているスタジオに多いですね。
「昔はそれなりにはやってたんだけどなあ……。」
「サービス業としても音楽に関してもそれなりにやってきた自信はあるつもりなのに……。」
「近くに競合店が出来てからお客様が減っちゃって……。」
そんな悩みを持っておられるスタジオも多いでしょう。
こういうスタジオの場合、ある程度ちゃんとできているだけに問題点が分かりにくい。
特に当事者にとっては「何がいけないんだろう?」となっていることが多いです。
これをダメなスタジオのパターン[Ⅱ型](Ⅱ型ダメスタ)とします。
大抵はⅠ型ダメスタかⅡ型ダメスタのどちらか
繁盛していないスタジオというのは、大抵はこれらⅠ型ダメスタかⅡ型ダメスタのどちらかです。
もちろん、両方の悪い部分を兼ね備えているハイブリッド・ダメスタもありますが笑
いずれにせよ、前提として自スタジオがどちらのパターンであるかという認識を誤ってしまうと経営改善は上手くいきません。
まずは現状認識が重要ですので、謙虚に振り返ってみましょう。
機能的価値と感情的価値とは
ではこれら2パターンの“ダメスタ”はどう改善すればいいの? ということになるんですが——。
そのために、ビジネスでよく用いられるある考え方を紹介します。
それが、
- 機能的価値
- 感情的価値
という考え方です。
ここで言う価値とは、ざっくり言えば、
「お客様が受け取るもの」
です。
ただ、「お客様が受け取る“もの”」といっても、それは物理的な「物(=商品)」だけとは限りません。
もちろんそこにはサービスも含まれます。
スタジオも基本的には物を売るのではなくサービスを提供することで利益を得る業種ですよね。
あまねく全ての商売は何らかの価値を提供し、その対価として利益を得ると考えておいてよいでしょう。
提供するのは商品であったりサービスであったり、あるいはもっと別の何かであったり、色々です。
その“色々(な価値)”を二種類に分けます。
それが先程の
- 機能的価値
- 感情的価値
です。
この二種類を、iPhoneを例に説明してみます。
まずiPhoneには電話をかけたりメールを送ったりする機能があります。
これはスマートフォンとして当然備わっているべき機能で、これが機能的価値。
そして、iPhoneを持っているという事によって得られる高揚感であったり喜びのような付加的な価値——これを感情的価値と言います。
機能的価値というのはその物やサービスの基本的な質であり、お客様が対価を払って受け取るには当然備わってなくてはならない要素です。
スマートフォンは電話をかけたりメールを送ったりといった基本的な事もできなければそれはそもそもスマートフォンとは言えません。
そのようなまずあるべき価値が機能的価値です。
一方、感情的価値とは、所有することで誇りが感じられたり、あるいは利用することで楽しい気持ちになれたりする——そういった価値です。
あくまで機能的価値がある上で、プラス・アルファとして付加されるのが感情的価値です。

機能的価値はまずは無くては話にならない価値であり、その土台の上に感情的価値は築かれます。
どの業種であれ、まずは機能的価値を十分に提供できるようになった上で、さらに感情的価値を提供できるようにすればお客様(しかも、その感情的価値に共感してくれるような“ファン”とさえ言えるお客様)が増えるのです。
二種類の価値のバランス
これら二種類の価値は、どちらか片方さえ満たされていればそれでオッケーというわけではありません。
つまり、機能的価値と感情的価値がアンバランスだと上手くいかないのです。
それゆえ、自スタジオにこの二種類の価値がそれぞれどれほどあるのか/無いのか、そしてどう増やしていかなければならないかを考えなければ、正しい経営改善はできません。
具体的にスタジオの事例に当てはめながら解説しましょう。
機能的価値が低いスタジオ
スタジオにおける機能的価値(あって当然の機能)とは何か。
それは、きちんと整備された最低限標準的なレベルの業務用機材がある、きちんと調律されたピアノがある、接客がきちんとしている、掃除がされている……等々。
これらがクリアできていなければ、それはすなわちスタジオにおける機能的価値が低いということになります。
つまり、前節で見た「Ⅰ型ダメスタ」は、まだ機能的価値を満たしていないスタジオであると言い換えることができるわけですね。
スタジオとしての基本的な機能に欠陥があるわけで、つまり改善すべきはそこです。
もしⅠ型ダメスタを飲食店に置き換えて考えるなら、そもそも料理がマズいということです。
前節で書いたように、こういうケースの多くはオーナーなり責任者なりのサービス業的/音楽的経験の浅さに起因して、機能的価値が満たされていない。
ならば解決策は明快で、まずはこういう機能的価値を持つようにスタジオを改善してゆけば良いわけです。
これだけなら話は簡単なはずです。
ただ、それにしてはⅠ型ダメスタは想像以上にいっぱいあるんですよね。
実は、同じⅠ型ダメスタでもちょっと違った原因に起因しているケースがあるんです。
そこで、先ほどのそもそも機能的価値が満たされていないスタジオをⅠ型ダメスタの中でも「Ⅰa型ダメスタ」としておきます。

もう一つのⅠ型である「Ⅰb型ダメスタ」について考えましょう。
それは特に元々は演者側であるオーナーさんにありがちなケースなんです。
相談を受けてスタジオに行ってみると、やはり同じように機材が壊れたままだったり安物ばかり使っていたりで、スタジオとしての機能的価値が充分でない。
しかしそういうスタジオで経営が苦しいと悩んでいる経営者さん本人に会ってみると、改善努力をしようとしている経営者さんもいるんですよ。
ただ、努力の方向が間違っている。
必要なのはまず機能的価値を満たすことなのに、なぜか感情的価値の方にテコ入れしようとしてしまっているんですよね。
どちらかというとアーティスト気質のオーナーさんで、既にご自身の世界観/価値観を強く持っている。
そして自分の世界観を表現してそれをお客様に味わってもらうことに爆進しすぎて、そもそもスタジオの機能に目が行っていない……。
店のコンセプトや雰囲気にだけ凝りすぎていて、機能的価値の方がおざなりになっているということです。
土台がしっかりしていないのに、頭でっかちになってしまっているんですね。

まず機能的価値があった上で感情的価値を充実させてこそバランスがとれているということになるのですが、感情的価値の方ばかり先に優先させてしまうというアンバランスな形になっている。
こういうケースも、やはり重要なのはまず機能的価値を高めてゆくことです。
感情的価値が低いスタジオ
前節で既に少しフライング気味に登場しましたが、スタジオにおける感情的価値の代表はコンセプトや空間の雰囲気といったものです。
他にも店主のパーソナリティー等も含まれます。
それ自体はスタジオの必要条件とは言えないかもしれないけれど、あることによってそれに共感してくれるファンが付いてくれるような要素です。
前節では感情的価値を高めようとすることが間違いであるかのように書きましたが、それはあくまで“まだ機能的価値が整っていないスタジオの場合”です。
機能的価値がある程度以上整っているスタジオである場合、感情的価値を打ち出してゆくことは大きな武器になります。
逆に言うと、ある程度の機能的価値が既にあるならば感情的価値を高めなければ競合店と差別化できない。
機能的価値にだけ頼る経営に留まってしまっているので競合店が出てきたら埋もれてしまう——つまり、これがⅡ型ダメスタなのです。
土台(機能的価値)ばかり大きくて、そこに乗るべき感情的価値が小さいままであるというアンバランスな状態ですね。

従って、Ⅱ型ダメスタのための改善方法は感情的価値を高めること。
お客様がスタジオを利用することで楽しい/心地いい/わくわくする/誇りに感じる/落ち着く……そういった感情を呼び起こされるようにする。
そのためにはスタジオのロゴやコーポレート・カラーの策定等を含むブランディングをしてゆくのが主な手段となります。
ブランディングというと何か洗練された高級感がある風にすることというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、決してそうとは限りません。
例えば書籍・雑貨店のヴィレッジヴァンガード。
日本全国に店舗があるので行ったことがある方も多いのではないでしょうか。
ヴィレッジヴァンガードのはコンセプトは「遊べる本屋」。
店内のごちゃごちゃ感やノスタルジックな雰囲気が来る人の心をわくわくさせますよね。
こういうのもブランディングの方向の一つです。
要はスタジオ機能だけでなくお客様の気持ちに訴えかける何かを持つということ。
店主の人柄が魅力的でお客様がつい会いに来たくなるというのも感情的価値の一つです。
そういう、スタジオ機能としては余剰とも思われる何かにお客様が共感してくれるからこそ、そのお客様はスタジオの強力なファンとなってリピートしてくれるようになります。
これがⅡ型ダメスタがとるべき戦略となります。
まとめ
今回はお客様が来ないスタジオ(=ダメなスタジオ)を機能的価値/感情的価値という観点から概説しました。
重要なのは自スタジオがどのケースであるのかを客観的に把握し、それに合わせた適切な戦略をとること。
“戦略”はもちろんですが、最初に書いたようにその前提となる“把握”も難しいのです。
これに関してはいずれもこれまでスタジオ改善に携わってきた経験から得たノウハウがあります。
本稿はあくまで概略で紙幅の都合もありますのでそこまで詳しくは触れられませんでしたが、それについては場を改めて解説してゆこうと思っています。
以上、「お客様が来ないスタジオの特徴——「◯◯的価値」のアンバランス」でした!