スタジオの基本装備であるマイク——特にボーカル用マイク——ですが、使用後に除菌・消毒はしているでしょうか。なんとなくその辺にあった消臭スプレーを吹きかけているという方もいるかもしれませんが、それはマイクにとってもそれを使う人間にとってもあまり良いことではありません。今回はおすすめのマイクスプレーとその使用方法について解説したいと思います。
おすすめのマイクスプレー
一般的な除菌スプレーほどではありませんが、マイクスプレーもやはり何種類も販売されていますのでどれを選ぶべきか迷うかもしれません。しかし品質や購入しやすさを考えると自然と絞られてきます。
JASSC MRC-ZERO 『マイクロホン・クリーンシャワー』
いきなり結論ですが、音楽スタジオで用いるべきマイクスプレーといえば現状ではほぼこれ一択となります。
JASSC(ジャスク)『MRC-ZERO マイクロホン・クリーンシャワー』です。
リハーサル・スタジオ等の受付でスタッフさんが使っているのを見たことがある方も多いのではないかと思います。
特性としては、
- 汎用の除菌スプレーによくあるような水で薄められたタイプではなく、高濃度エタノールなのでしっかりと除菌できる。
- 対象に向けて集中的に噴霧できるタイプのスプレーノズルなので、成分が不必要に周りに広がらず使いやすい。
- 無香料なのでマイクに香りが付かない。(アルコールそのものの匂いはします。)
- 多くのスタジオで業務用として使われている信頼感。
といった点が挙げられます。
実際に使ってみると、「成分が濃い!」というのが実感として感じられます。
不必要に周りの空気中に広がらないスプレーノズルというのも意外と重要です。広がりやすいスプレーの場合、アルコール・アレルギーの方にとっては少し離れた所にいても身の危険を感じてしまいます。集中的に噴霧できる『MRC-ZERO』はそれを少しでも抑えることができるのではないかと思いますし、何より使用対象であるマイクに成分をしっかりと集中させることができます。
近距離で布等に吹きかけるとそこに成分がしっかりと残る感じになりますので、直接マイクに噴霧するだけではなく一度クリーニング用クロス等に噴霧してからそれを使って拭くという方法にも適しています。
他の製品に比べると若干割高ではありますが、それを補って余りある信頼感が感じられます。コロナ禍以降は除菌に敏感になっている方も多いでしょうから、特に業務用で使われる場合は信頼感のあるものを用いる方が良いと思います。
なお、セット販売もあるようなので業務用で使われるならこちらもおすすめです。
パイン・クリエイト 『スーパーマイクシャワー』
次によく見かけるのがパイン・クリエイト『スーパーマイクシャワー』です。
こちらはスタジオというよりカラオケ店でよく見かけるように思います。
この製品の利点はとにかく安いこと! 先ほど紹介した『MRC-ZERO』に比べると、販売サイトによって値段は違いますが概ね安く売られています。
ただ、安いだけあって残念な点もいくつかありまして、
- 香料がキツい。
- 噴霧の際に霧状の細かい成分が周りに散りやすい。
といった点が挙げられます。
特にこの香料が……なんというかアメリカのガムのような(笑)結構派手な匂いがします。まぁ好き嫌いは人によって違うので、これを良しとするかしないかは皆さん次第です。
とにかく安い方がいい! という場合は検討されてみるのもありかもしれませんね。
また、シリーズで何種類かあり、こちらもそれぞれセット販売もあるようです。
マイクスプレーの使用方法
原則的にはそれぞれのマイクの取扱説明書とマイクスプレー製品に記載されている使用方法を読んでいただくのが間違いありませんが、ここでは『MRC-ZERO』のようにアルコール濃度が高めの製品の一般的な使い方を説明します。
ヘッド部分
まずマイクのヘッド部分(集音する部分)ですが、グリルと呼ばれる部品があるタイプと無いタイプに分かれます。グリルとはヘッド部分に付いている網のような形状の物で、その中に収められているマイク本体を保護しているカバーです。そのグリルを取り外せる場合は取り外します。グリルの中に収められているヘッド部の中身は精密機器ですので、そこに直接スプレーしてはいけません。取り外したグリルの方は機械ではありませんので直接スプレーを噴霧しても構いません。液状に成分が残るようであればクリーニング・クロス等で拭きましょう。
また、ダイナミック・マイクでかつマイクの取扱説明書がそれを禁じていないようであれば、『MRC-ZERO』のようなマイク用アルコール・スプレーをグリルを付けたままのヘッド部に噴霧しても構いません。その際は、対象から10cmほど離して約1秒間噴霧します。コンデンサー・マイクの場合はより慎重な取扱いが必要となりますので、マイク専用スプレーといえどもグリルを付けたヘッド部分に直接噴霧するのは避けた方がよいかと思われます。
持ち手部分
歌う際にマイクを手に持って歌うこともあるので、ダイナミック・マイクの場合は持ち手の部分にも噴霧します。やはり対象から10cmほど離して約1秒間の噴霧が目安ですが、ヘッドの内部やケーブル接続部にスプレーがかからないようにしましょう。この時、ヘッド部分にはグリルを付けた状態にしておけばよいでしょう。
コンデンサー・マイクの場合は、スプレーをいったんクリーニング・クロス等に噴霧して、それを使って拭くのが無難でしょう。
ケーブル接続部分
ケーブルを接続する部分は端子が剥き出しになっていますので、ここには噴霧しないようにしましょう。また、ワイヤレスマイクの場合はケーブル接続部分はありませんが、その代わりに内蔵電池等が入っている部分があるかもしれません。いずれにせよ、内部の機械にスプレー成分が浸透してしまいそうな様子の箇所には直接噴霧しない事をお勧めします。マイクの取扱説明書よく読み、可能であれば必要に応じてスプレーをクリーニング・クロス等に噴霧して、それを用いて拭きましょう。
まとめ
今回はマイクスプレーについて解説しました。『MRC-ZERO』のようなマイク専用スプレーであれば安心して使うことができます。ただし、その場合でもマイクの取扱説明書はしっかりと確認するようにしましょう。
また、マイクスプレー以外にもマイクを清潔に保つためのグッズはいろいろあります。ご自身の機材をより清潔にしておきたい場合や、スタジオを運営していてお客様のためにマイク管理をよりしっかりとしてゆきたい場合は、そちらも参考にしてみるのもよいのではないかと思います。